2013/11/13

劣化国家 ニーアル・ファーガソン(2) 過剰な公的債務は、世代間の社会契約が破綻していることの症状だ



民主主義の赤字

イギリスの人文主義者リチャード・タヴァナーは気候や地理、疫病といった自然の力よりも、制度こそが現代史の動向を大きく決定付けるとした。

何が大いなる分岐を引き起こしたのかという問いに答えるには、制度が果たした役割に目を向けるのが1番だ。

組織の型には2つある。アクセス制限型とアクセス開放型だ。

前者は、低成長、少数の非国家的組織、小規模で中央集権な政府が被統治者の同意を得ずに運営される、個人や王家のつながりをもとに組織された社会的関係。

後者は、急速な経済成長、多くの組織からなる活気ある市民社会、大規模で分権的な政府、法の支配などの非人格的な力が支配する社会的関係。そこでは所有権、公正性、少なくとも建前上の平等が確保される。

西ヨーロッパは初めてアクセス制限型からアクセス開放型に移った社会だった。

イギリスが包括的な制度を輸出したのに対し、スペインはアステカやインカから引き継いだ制度に、収奪的な制度を上書きするにとどまった。

文化は規範を植えつける一方で、制度はインセンティブを生み出す。

韓国と北朝鮮、西ドイツと東ドイツ、アメリカとメキシコの国境で2つに分断された都市ノレガスは制度には地理や文化を凌ぐ影響力があることを示している。

ボツワナは植民地独立後のほとんどのアフリカ諸国と違い、独立を実現するにあたり、収奪的な制度ではなく包括的な制度を確立することに成功した。

途上国の貧困層が持っている不動産の総額は9兆3000億だが、所有権に関する法がきちんと機能がないため死んだ資本となっている。アラブの春は、不満を抱えた起業家予備軍ともいえる。

1500年以降の西洋の成功を制度の観点と法の観点から説明するのは理にかなっている。17世紀イギリスの議会の権限をめぐる争いの主眼が、国王による恣意的な搾取から個人を保護する事にあったのは間違いがないからだ。

順序ははっきりしている。まず名誉革命が起き、次に農業改良、それから帝国の拡大、そして産業革命の純で起きた。

制度議論は、比較分析を行うとさらに説得力を増す。アジアには商人はいたが、企業やましてや議会は存在しなかった。イスラムには個人によって設立された法人格を持たない信託はあったが、銀行はなかった。

大いなる分岐の終わりと、西洋と東洋の大いなる再収斂の始まりという現代の最も驚くべきトレンドを理解するうえでもこの枠組みは有効だ。東アジア諸国は西洋文明のキラーアプリケーション、経済競争、科学革命、現代医学、消費者社会、労働倫理をダウンロードした。

適度な制度を備えた社会は、そこに住む人が不品行を働いたとしても繁栄できる。18世紀のイギリスの繁栄をもたらしたのは聖書の教える徳ではなく、ひどく世俗的な悪徳であった。

名誉革命の真の重要性は、資金の借り手としてのイギリス国家に信頼性を与えたことだ。1689年以降は議会が税制を支配、改善、王家の支出を監査し債務不履行を事実上禁止した。この結果17世紀末から借入コストがまったく上がらないどころか、逆に下がる中で公的債務が急速に積みあがっていく時代が始まった。

代議政治の方は独裁政治よりも、大衆の意向にの変化に反応しやすく、したがって独裁君主が犯かしがちな間違いをしでかす可能性が低い。

西洋の民主主義が壊れているからといって北京型の一党独裁国家に憧れるのは間違っている。中国に経済特区と一人っ子政策をもたらしたのもこの体制であったことを忘れてはいけない。前者は成功したが後者は大失敗した。

問題の核心は、公的債務という仕組みのおかげで、現世代の有権者が投票権を持たない若者やまだ生まれてない人たちのお金を使って生きていけることである。国家の残高が急増していることは、現在と将来の就労者の負担の高まりを示唆する。

将来の世代は、大幅な増税か大幅な公共支出の削減のいずれかの形で、重い負担を引き受けることを現行法で義務付けられている。

エドマンド・バーグは真の社会契約はルソーの言う国家と人民の間の契約、つまり一般意思ではなく、世代間の協同事業だと書いている。現在の財政政策が暗示する世代間の莫大な移転には、まさしくこの協働事業の、衝撃的で、おそらくかつてない規模の侵害が見られる。

ユーロ圏の政府のうち構造的赤字をGDPの0.5%以内に抑えるという条件をクリアしているのは2カ国しかなく、ほとんどの国がその4倍以上の構造赤字を抱えている。そして経験上、構造赤字の削減に本気で取り組もうという政権は、必ず政権の座を追われることになる。

先進国の成長率が90%を超える債務の山にまったく影響されないとは考えられない。

西洋の民主主義国がいまの無責任なやり方を続けているうちに、ある時点で、ギリシャなどの地中海諸国のあとを追って、財政の死のスパイラルに陥るシナリオはありうる。この悪循環は、信用の喪失に始まり、借りれコストの上昇、最悪の瞬間に、財政支出削減と増税を余儀なくされて終わりを迎える。シナリオの最終段階では、何らかの形の債務不履行とインフレーションが必ず伴う。

劣化国家(1) なぜ西洋は衰退したのか
劣化国家(2) 過剰な公的債務は、世代間の社会契約が破綻していることの症状だ
劣化国家(3) 金融業界の規制と法の執行
劣化国家(4) アメリカは法の支配ではなく、法律家による支配になっている
劣化国家(5) 市民社会と国家
劣化国家(6) 大いなる衰退論からの示唆

**シャドウバンクと低金利

大手銀行が規制に縛られる中、シャドウバンキングがFedのその低金利から利益を最大化しようと拡大している。デベロッパー、特定金融会社、不動産投資証券の残高は2008年の7790億ドルから1.22兆ドルまでに拡大している。急成長するREITは短期の資金を借り、税制有利な物件を長期に渡って運用する。BDCsも資本とローンを同じような仕組みで企業に貸している。

**Alibabaが1日のオンライン販売記録を更新

深夜までに57億ドルを売上げ、去年、米国で行われたサンクスギビングのCyber Mondayを上回った。中国のオンラインショッピングは1900億ドル~2100億ドルとされており、米国の2200億ドル~2300億ドルに接近している。しかもブロードバンドの家庭は31%、モバイルは21%と未だ成長の余地がある。地方は海外ブランドが無い場合があるのもオンラインが使われる理由のようだ。

**フィリピン、緊急事態

政府は台風の影響を受けた人数を2倍にし950万人とした。軍は現在のところ942名が死亡したとしているが、地元の役所では10000人を上回るとしている。一部では飢えと渇きから略奪が起こっているようだ。80の州のうち41の州が被害を受け、30の州では電気が通ぜず、15の州は電話も通じない。政府は良く準備をしたが、それでは対処できなかった。フィリピンでは年に20の台風を経験し、長い沿岸線は津波や嵐に脆弱である。

日経平均終値:14588(+318)
東証一部売買代金:2兆1049億
マザーズ売買代金:1078億
最高値銘柄:
売買代金上位:ソフトバンク、トヨタ、三井住友、三菱UFJ、ホンダ、KDDI、日立、エナリス、ソニー

S&P終値:
S&P売買高:
最高値銘柄:WPS HTH P
売買代金上位:KORS LLY LCC HOLX