2013/11/11

劣化国家 ニーアル・ファーガソン(1) なぜ西洋は衰退したのか


薦められて読んでみたらとても良かった本で、こういった頭の良い人の話を読めるというのは読書の幸せだろう。

本書では西洋がなぜ衰退したのかを、採用している制度によるものとし、民主主義、資本主義、法の支配、市民社会などの観点からそれを探っていく。

歴史の教授であることからその視点は広くまた長い。そこに制度という枠組み、ある種のシステム論が入ることでより一層の説得力を持つようになっている。

社会学は実験を行えないのが弱点とされているが、制度に関する限り、評価基準にはよるものの、成功した制度と失敗した制度の差を見つけることができるとするのは妥当な考えではないだろうか。

なぜ西洋は衰退したのか

最近の労働者は同じ場所に留まる傾向がある。昔からアメリカでは人口の3%が、主に職を求めて別の州に移動したが、金融危機以後は移住率は半減した。社会的流動性(社会階層間での移動)も低下している。

債務軽減のために取れる施策は3つ。技術イノベーションの力を借り、金融刺激策などを利用して、成長率を金利以上に引上げる。公的債務の大部分を不履行にし、かつ民間債務は破産によって棒引きする。通貨切り下げとインフレで債務を帳消しにする。

インフレは政治的現象。

今日、所得分布の下位の5分の1の家庭に生まれた子供が、大学を出ずに上位5分の1にのしあがれる確率は5%。特権的な私立大学を出て、一握りの高級住宅街の住人同士で結婚し、そこに固まって住む人たちは新しいカーストの様相を強めている。

アダム・スミスは人口の大きな割合を占める労働貧民が最も幸せで快適な暮らしができるのは、社会が最大の富を獲得した時ではなく、さらなる獲得を目指して前進を続ける、進歩的な状態にあるときとし逆に、社会が定常状態にあるとき労働者は苦しく、衰退状況は惨めであるした。また定常状態の第2の特徴として、腐敗した独占的なエリートが、法・行政制度を自分の利益になるように利用できることを挙げている。中国はまさにこの状態だ。

どんな体制転換においても、悪魔は細部に宿る。つまり憲法の細部や、その設計者たる憲法制定会議に関する規則の細部にこそ、落とし穴がある。文民の諸機関は、軍隊とどのような関係にあるべきか、エジプトでは火急の問いとなっている。

異なる法典を比較する上で鍵になるのは、いわゆる規則の法(rule of law)、つまり法それ自体が作られる法だ。イスラムの厳格な宗派では法は変えられないものになっている。これに対し、イギリスのコモンローなどは有機的に変化していく。

昔は多くの人がクラブやその他の任意団体に所属していた。しかし現代ではもはや当てはまらない。市民社会の活気は失われた。

最適とはいえない枠組みが、良い枠組みよりも数では勝ることを歴史は物語っている。

ディケンズにとってイギリスの法の支配は、称賛どころか嘲笑の的だった。

劣化国家(2) 過剰な公的債務は、世代間の社会契約が破綻していることの症状だ
劣化国家(3) 金融業界の規制と法の執行
劣化国家(4) アメリカは法の支配ではなく、法律家による支配になっている
劣化国家(5) 市民社会と国家
劣化国家(6) 大いなる衰退論からの示唆


**米10月日農業部門就業者数は204000人増

市場予想を大きく上回った。この水準はFedの持続的改善にあたり、12月18日にtaperingをする可能性が高まった。一方で目標や消費の弱い伸びによるGDPのデータは、米国経済の回復が脆弱であることを示している。

**フィリピンに大型台風

Haiyanと名付けられた台風は最大風速150mphを維持しながら上陸をした。政府の避難施設は80の州で29が稼動し、14万5000家族以上が上陸前に非難している。気象庁は停電をしている20以上のエリアに最高度の警戒を発している。

**強気のみがTwitterの価格を正当化する

Twitterはその上場で18億ドルを獲得し、米国の今年のIPOは500億ドルは超えた。これは2000年以来の高い数字である。ジャンクボンドも活況で、PikとPik toggleも高い水準にある。またSNSよりもIPOブームなのはバイオテクノロジーである。米国はバブルなのだろうか。センチメント指数では市場からベアが居なくなっていることを示唆している。いずれにしても市場が反転したときTwitterの価格は下落する運命にある。