2013/09/09

トラウマ恋愛映画入門 町山智浩 観たい映画が増える本




男は皆、同じだから。性的幻想や母や映画スターや、自分の何かを女性に投影して、決して女性そのものを見れないから。

あとがきにも、ダメ男の品評会になってしまった、とありますが男性諸氏にとってはなにかと耳が痛いところだと思います。

その点、女性監督が撮っている映画ではやはり視点が変わっているのが良く解ります。この本のように女性評論家が女性が撮った映画を解説してくれる本なんかがあると面白そうです。

ということでそれぞれで面白かった部分を抜粋してみました。

1.チェイシング・エイミー 
2.アニーホール
3.エターナル・サンシャイン
4.日の名残り
5.アルフィー
6.ことの終わり
7.めまい
8.パッション・ダモーレ
9.ジェラシー
10.隣の女
11.リトル・チルドレン
12.ラストタンゴ・イン・パリ
13.愛のコリーダ
14.ラスト・コーション
15.幸福
16.赤い影
17.アイズ ワイド シャット
18.ブルーバレンタイン
19.逢びき
20.道
21.アウェイ・フロム・ハー 君を想う
22.永遠に生きて


1.チェイシング・エイミー 1997年 アメリカ ケヴィン・スミス

オクテのオタク男はサセ子の過去を許せるか

・自分だけ悩みをぶちまけて楽になるんてずるい!一秒でも私の気持ち、考えた?

・バカだったのよ!愛だと勘違いしてたの!何でも試してみたいの!でも、あなたは求めていた人なの!探していたパズルのピースなの!

2.アニーホール 1977年 アメリカ ウディ・アレン

ウディ・アレンは自分を愛しすぎて愛を失った。

・意識の手法的流れ。

・アルヴィは、自分の出自を自己憐憫に利用しているにすぎない。

・アルヴィは人生に期待しない。期待しなければ傷つかないですむ。

・自分を愛しすぎ、守りすぎたアルヴィはアニーのために自分を捨てられなかった。

3.エターナル・サンシャイン 2004年 アメリカ ミッシェル・ゴンドリー

忘却装置で辛い恋を忘れたら幸福か?

相手に欠点があると愛せないのか。性格が違いすぎると愛せないのか。人を愛するというのはそんな理屈ではない。どんなに辛い恋愛だったとしても、かけがえのない経験だ。一度はその人が世界のすべてだと思ったのだから。

4.日の名残り 1993年 ジェームズ・アイヴォリー

愛を隠して世界を救いそこなった執事

・スティーブンスは、自分には自分の考えがあるなどとはかけらも思っていなかった。主人に従うことが執事の品格だと信じていた。

・なぜ、その気持ちを私と分かち合ってくれないのですか?

5.アルフィー 1966年 ルイス・ギルバート

女たらしは愛を知らない点で童貞と同じである

・観客に向って話かさせる手法

・なんで僕に頼むんだ。君の問題だろ。僕がとやかく言うことじゃない。

・自分の問題ではないのか?アルフィーは子供をどうするのか、決して自分の意見はいわない。自分が正しいと思うことをすればいいとギルダに選択を押し付ける。

・先進国では、誰かと共に生きて行く煩わしさより、一人で生きる気楽さを選ぶ人々が増えている。それはアルフィーとどう違うのだろう?

6.ことの終わり 1999年 イギリス・アメリカ ニール・ジョーダン

恋するグレアム・グリーンは神をも畏れぬ

・ベンドリクスは嫉妬の量こそが愛の量だと考えている。僕は無限大に嫉妬しているから君を無限大に愛している。逆にサラは私はあなたを幸福にするものなら何でも好きと言う。僕が他の女を抱いても?』『それであなたが幸福なら。二人の愛は根本的に違う。

・サラは死の床でファーザーに会いたいとつぶやく。それは神父を意味するのか。神を意味するのか。

7.めまい 1958年 アメリカ アルフレッド・ヒッチコック

ヒッチコックはなぜ金髪美女を殺すのか?

・美女に憧れながら、決して自分は愛されないと思い込んでいたヒッチコックは、美しい女性はすべて欺瞞であり、ごまかしであり、心と肉体にとって危険な誘惑であるという信念を持っていたと。

・ヒッチコックも、わたしは男が持っている夢見がちな本性の微妙な特質を表現するために、この映画を作ったのだ、と言っている。

8.パッション・ダモーレ 1980年 フランス・イタリア エットーレ・スコーラ

愛は本当に美醜を越えるのか?

・愛と性欲はどう違うのか?その疑問に突っ込んだ映画は多くない。映画の本質的問題に触れてしまうからだろう。そもそも映画って、見た目のいい俳優への疑似恋愛を売る娯楽でしょ。

・彼らは愛し「あって」はいない。でも世の中のどれだけの人が本当に愛しあっているというのか?

9.ジェラシー 1980年 イギリス ニコラス・ローグ

嫉妬は愛から生まれ、愛を殺す

・私をありのまま理解してほしいの!

・私を理解するよりも愛して欲しかった。私を定義しようとしないで欲しかった

10.隣の女 1981年 フランス フランソワ・トリュフォー

トリュフォーも恋愛のアマチュアだった

・いや、僕は君を愛…… と言いかけたベルナールをマチルドは遮る。愛したのは私。あなたは理屈だけ。愛の意味を求めただけ。

・男は意味や言葉で愛をわかろうとする。女にとって愛とは生きることであり、言葉や理屈ではない。噛みあうはずがない。

・男にはわからないわ。僕にもわからないよ。フィリップも男だった。愛について、男はみんなアマチュアだ。

11.リトル・チルドレン 2006年 アメリカ トッド・フィールド

不倫とは過ぎ去る青春にしがみつくことである。

・大学院で読んだ時、ボヴァリー夫人はバカだと思ったわ。サラは言う。でも、今読み直すと彼女の気持ちがわかる。彼女を駆り立てたのは餓えよ。そうだろう。しかしそれは愛だろうか?

・子どもは、自分以外の人間の気持ちなど考えない。

・ボヴァリー夫人も、物事から自分の心が直接取り入れる足しにならないものは、すべて不用として捨て去るような自己中心的な人間として描かれている。フリーベルはそれがロマンティシズムの正体だと考えている。

・私は世界の主役のはずなのに!私!私!私!

12.ラストタンゴ・イン・パリ 1972年 ベルナルド・ベルトルッチ

セックスとは二人以外の世界を忘れることである

・この部屋には愛はない。売春と違って金も介在しない。生活も、仕事も、社会もない。ただ純粋なセックスだけの関係。どこに到達するのかわからない実験が始まった。

・60年代のカウンターカルチャーは、恋愛や結婚から分離したフリー・ラブと経口避妊薬によって、純粋なセックスだけでコミュニケーションを拡大しようとした。実験は失敗した。純粋なセックスなどありえない。嫉妬が、家族が、世間が、将来が、生活が、世界が、現実が入り込む。それを全部ひっくるめて引き受けることが愛なのかもしれない。

13.愛のコリーダ 1976年 日本・フランス 大島渚

完璧な恋人は、NOと言わない男である。

・定の語った吉蔵は、多分に彼女の願望だったのではないか。何の自我もなく、ただ定の欲望を受け止め続けるだけの純粋な恋人。つまり、ペニスそのもの。

14.ラスト・コーション 2007年 アメリカ、台湾 アン・リー

愛は勝ってはいけない諜報戦である。

・佳芝はその後も何度か梁に抱かれた。裕民は佳芝と目も合わせてくれない。あなたのためにしているのに!

・この人は本当に私を愛している。いきなりそう思った。すると激しい炸裂音が胸の中で起こり、何かを失ってしまったように感じた。それはスパイとして、演技者として、そして女としての勝利の瞬間だ。だが、恋愛はゲームではない。勝ってはいけない。それは大事な何かを失うことだ。麦太太という仮面は消滅した。

15.幸福 1965年 フランス アニエス・ヴァルダ

幸福とは現実から目をそらし続けることである

・世の中には作られた幸福のイメージがあふれています、とヴァルダも言っている。私はそれをひっくり返したかったのです。

・世間のフランソワ批判に対してヴァルダは、じゃあ、死ぬまで妻の喪に服せって言うの?と反論している。妻への愛に殉じることは理想かもしれないが、現実とはこんなもんだと。

16.赤い影 1973年 イギリス・イタリア ニコラス・ローグ

・この世には、見た目どおりのものなんてないんだな。ローグがこのセリフに執着したのは、それがこの映画のテーマだからだ。

・赤い影は、結婚生活20年目の風景だ。私は恋愛と結婚生活の違いに興味がある。結婚生活はパラダイスだとされているけれども。

・ローグはジョンとローラが本当に心から愛し合っていることを表すために愛情あふれるセックス・シーンを加えた。それほど深く愛し合っていても男と女の間には越えられない違いがある。男性は女性と口論になると理詰めで相手を追い詰めてしまう。論理で説明できない感情を受け止めなければいけないのに。だから女性は逃げしまう。時には他の男に、時には女に、時には宗教に。

17.アイズ ワイド シャット 1999年 アメリカ スタンリー・キューブリック

キューブリック最後の言葉はFUCKである

・しかし完全に幻想を捨てた後に男女は恋愛を維持する事ができるのか?

・二人が欲望したのは性だけであって、愛ではなかった。愛はお互いの間にしか求めないから。

・愛や結婚は欲望の上に渡されたロープの上の綱渡りのようなものだ。そのロープから落ちないようにするには、お互い求め続けるしかない。

18.ブルーバレンタイン 2010年 アメリカ デレク・シアンフランス

結婚は愛のゴールでなく始まりである

・六年経ってもディーンは何も変わらなかった。君と僕、君と僕、他のことはどうでもいい。でもシンディは、社会の中で生きたかった。二人の亀裂は広がっていった。

・愛は得ただけでは済まない。水をやるのを忘れたらすぐに枯れてしまう。愛さえあれば何でも解決できるわけではない。

19.逢びき 1945年 イギリス デヴィッド・リーン

恋におちるのはいつも不意打ちである

・逢びきはすべてが終わった後で始まる映画なのである。

・君はずいぶん遠くに行ってたね。夫はすべて気づいていたのだ。ありがとう。僕のもとに戻って来てくれて。

20.道 1954年 イタリア フェデリコ・フェリーニ

・道という作品は、信頼関係の不可能性と裏切り、ずっと膨れ上がったカトリック的罪悪感に深く根差している、とフェリーニは言う。

・このダメ男を救ってやるのが、神様に定められた、あたしの生きる意味なのかもしれない。そんなジェルソミーナの覚悟をザンパノは無残にも裏切っていく。

・オレはお前を本当に愛していたんだ!お前が死んで、気が狂うほど悲しいよ!

21.アウェイ・フロム・ハー 君を想う 2006年 カナダ

認知症の妻に捧げる不実な夫の自己犠牲

・記憶は消えていくけど、消えてくれないものもあるわ、と言い出した。わかる?わたしたちが話すのを避けてきたことよ。

・人はみんな要求が多すぎるのよ。毎日恋していたいのよ。大変ね。

22.永遠に生きて 1993年 イギリス リチャード・アッテンボロー

苦痛のない愛はないが愛のない人生は無である

・神の実在を信じるからこそ、神を憎まずにいられない

・どれほど愛しても別れは必ず来る。でも愛さずにはいられない。誰も愛さない人生は、誰かを愛して傷つけるよりも不幸だから。

・大人になってから、私は傷つくほうを選んだ。この日の痛みはあの日の幸福の一部。そういうことで手を打とう。

**Tesla Motors

電気自動車のTesla Motorsが1面を使って紹介されている。Model Sは62400ドルで発売され全世界で13000台売れており、ハリウッドやシリコンバレーの技術者達が競って買っている。世界で最も売れているEVのNissan Leafが120マイルの走行距離でフル充電に4時間かかるのに対し、Model Sは230マイル走行しフル充電に75分である。

EV全体の売上は2012年には11000台と2011年の倍となったが、世界全体の0.2%に過ぎなく2015年に100万台というオバマのプランには程遠い。技術的な課題はエンジンとバッテリーであるが、バッテリーは年に5%~8%の改善を示している。

大企業は需要があるか見ていて、迅速な判断ができないとTesla MotorのMuskは言い、また破壊的な変化はiPhoneがそうであったように常に新しい参入者によってもたらされると述べる。Teslaは既にFordの1/3の時価総額を誇る。

まさにイノベーションのジレンマを地で行く格好だ。

**ShillerとSiegel

ShillerとSiegelは市場では有名である。前者はベア派に支持され、後者はブル派の支持を得ている。Shillerは現在62%の資産がovervalueだとする一方で、SiegelはShillerは間違ったデータの扱いをしており現在はchepかfairだと言っている。違いはWW2後の企業の配当指向の変化に拠るようだ。Shillerはovervalueとundervalueの時に動けば良いとするのに対し、Siegelはインフレ調整後でも株価は6.5%のリターンをもたらしてきたのでBuy&holdをするべきだとしている。

・acceptance 支持

**世界の資産分布

FTの週頭に世界の資産クラスの分布が書いてあって興味深かった。2013年6月末時点で2兆7484ユーロが運用されている。内訳は債券が9184億ユーロ(33.4%)、株式が1兆0049ユーロ億(36.6%)、その混合が1690億ユーロ(6.1%)、Money Marketが5348億ユーロ(19.5%)となっている。